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ビグローは映像演出がお上手だなあと思う。
例えば心の揺れ動きを、『吊るされて揺れる魚雷』の映像と被らせて表現したり。
今回でいえば、焼けた車の車体からテロリストが仕組んだ起爆装置を探すシーンがあるんだけど、配線を主人公がいじくってるうちにワイパーが突然動き出すのさ。死んだように見える焼けた車体、でも起爆装置は生きてる、みたいな……。ワイパーの動くキイキイという音が神経を逆なでし、しかも不気味に延々と続いて怖さ倍増!
こういう擬人法、比喩表現はかなり好きだな。
延々と続く緊張感がつづくのに、客を疲れさせず、飽きさせないテクニックもなかなかだと思う。
じ~~~~~~~~っと、日が暮れるまで敵陣地をひたすら監視するシーンとか、なんで目が離せないんだろうって思うけど、瞼の上に止まったハエを払うのも忘れて双眼鏡見てんだから私だって息詰めて見つめちゃうよ!!
サスペンスの練り方もいいと思う。
テロリストと主人公の、セリフはなしだけど目線だけでつづっていくシーンとか。
目線も会話も絡み合いはないけど、敵陣の監視中に相方にジュース飲ませてあげるっていう小さな気遣いの描写で、二人の関係性を進展させるとか。「ありゃこの二人、いつの間にか仲良くなってる!」ってトキメく気持ちを抑えられない(;゚∀゚)=3ハァハァ さらにその後、テロリストのアジトで見事に息の合った潜入作戦を見せ付けてくれちゃって、「ありゃりゃこの二人、いつの間にかひとつになってるよ!!!」って勘違いが止まらない。
こういうストーリーの進め方、うまいな~って思う。
敵味方、市民が混在する市街地の戦場を、リアリティーを持って描けている点もよいと思う。
探し人するために基地を抜け出した主人公が、基地に戻ってきたはいいけれど、不審者として仲間から乱暴に取り押さえられるシーンなんて、『誰がテロリストかわからない、誰も信じられない市街地の戦場』を如実に表現してる。
爆発物解体作業やってるときに集まってくるイラク人ギャラリーが、みんな怪しく見えてきちゃって、イラク人が手にしている携帯電話もカメラもどれもこれも起爆装置に見えちゃってその緊迫感たるや…うひー!
あと「うわ~」って思ったのは、砂漠、瓦礫と埃ばかりのイラクから一時帰還し、母国での私生活が差し入れられた部分。「シリアル買って来て」って奥さんに言われたジェームズが、棚いっぱいにならんだ何種類ものシリアル箱の前で呆然と立ち尽くすシーン。爆弾処理する時には何も迷いはしないのに、たったひとつのシリアルを選べない自分。モノで溢れかえった母国に呆れ返っちゃうっていう。
戦場と母国、どっちが彼に合った場所なのか……好きだなァ、こういうの!
銃や爆弾、血に触れたその手で、雨どいを掃除し、奥さんの肩を抱き、幼い息子をあやす姿とかね……そのどっちもがジェームズの姿で、ジェームズという人間の描写が厚みを持つにしたがって、見てる側は切なくなってくるわけですよ。ベタだけど、この描写がエンディングに効果をもたらしてるとおもうな。
どんくらいイラクでの現状を画面に押し出しているのかは尺度によって意見が分かれるだろうし、全部を表現できるわけないけど、あるひとつの見方を提示している、という観点でいけば成功している作品だと思う。
まだまだ色々書きたいことあったけど、とりあえずこんだけ。
ドキュメンタリー性をうまいこと残しながら、娯楽性を高めた作品で面白かった。
補足:自分の目玉から『腐フィルター』を片付けるのをうっかり忘れてて、ジェームズとサンボーンたらっっっっヽ(;*´ω`)ゞ っていうシーンの連発にのた打ち回った!!!なんつーか、近すぎるんだヨ、この二人!!「離れなさい」って思わず世間体気にしてつぶやいちゃうから!!!