くりむき
菊池 「康平。甘栗だぞ~」
尾栗 「お!サンキュ」
菊池 「たまに食べたくなるよな」
尾栗 「商店街のやつか?」
菊池 「そうだ」
尾栗 「うまいよな~・・・」
皮をむき始める二人。
黙々と皮を剥く二人。
と、菊池の手がとまる。
菊池 「康平」
尾栗 「ん?」
菊池 「なんで剥いた栗を並べてるんだ?」
尾栗 「え・・?だって先に全部剥いてから食べたくねえ?」
菊池 「なんか・・・貧乏くさいぞ・・・」
尾栗 「お前みたく剥いた端から食うのってさ、手は皮剥き続けてる
し、頭は作業に集中しちゃってるし、
ゆっくり味わえないだろ?」
菊池 「はあ?」
尾栗 「そういうのヤなんだよ。俺は一気に仕事終わらせて、
ゆっくり報酬を味わうタイプなの」
菊池 「栗剥きに関しては、そういう問題じゃないと思うぞ」
尾栗 「なんだよ。なんで一々文句言うんだ?」
菊池 「だって・・なんか・・みっともないぞ」
尾栗 「俺が田舎出身だって馬鹿にしてるだろ?」
菊池 「まあた、そういうこと言う!なんでそう飛躍するんだよ。
ひがみ屋だなあ」
尾栗 「ひがんでねえよ。雅行が気障ったらしいんだよ」
菊池 「はいはい・・そうむくれるな。悪かったよ」
尾栗 「・・・・・・」
尾栗の子供らしい態度に小さく笑う菊池。
ついからかいたくなるのである。
二人、栗を剥く。
と、ふと菊池が顔を上げる。
菊池 「なあ」
尾栗 「なんだ?また問題あるのか?」
菊池 「もう言わないって!・・あのさ」
尾栗 「ん?」
菊池 「 洋介ってどうやって食べるかな?」
尾栗 「・・・栗をか?」
菊池 「ああ」
尾栗 「・・・どうするかな?」
菊池 「あいつ血液型、A型だもんな」
尾栗 「一個づつきっれーに剥いて、
折り詰めにしてから食うのかな?」
菊池 「いや、さらに甘煮にするか、栗ご飯にするか
マロンケーキにするか、そのまんま食べるか
ずうう~~~っと考えて、結局干からびて硬くなるまで考えて、
食えなくなるタイプかもしれないぞ」
尾栗 「ぶはははは~!計画倒れのA型か?」
菊池 「あ、でも洋介、慎重だけど几帳面じゃないもんなあ・・」
尾栗 「いっそ豪快に皮ごと食うかもしれないな」
菊池 「ありえるなあ~」
尾栗 「皮ついてたの知らなかった~みたいな」
爆笑する二人。
そこへ噂の主が突如現れる。
角松 「・・・・?なんだ?楽しそうだな?」
菊池・尾栗 「・・・・・はははははーーー!!!!」
角松 「なんだよ?なにが可笑しいんだよ?」
尾栗 「いや・・ははは・・何でもない・・・」
菊池 「くくくくっ・・」
角松 「?・・お!甘栗じゃん!いただき~」
そう言って、尾栗が苦労して剥いた栗を一気に鷲づかみにすると、ばくりと一口で平らげる。
唖然とする二人。
角松 「うま・・お前ら、会議遅れるぞ・・・俺先行くわ・・・」
頬張りつつ、残りの尾栗の剥き栗を掴んで退室していく角松。
尾栗は茫然自失としている。
口がパクパクしている。
菊池 「・・・・他人に剥いて貰ったのを食べるタイプか・・・・・」
おしまい