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最近は、
「採血で以前、気分が悪くなったことはないか」
と採血前に問診されるようになりました。
通常の検査で採る血の量は、貧血を起こすほど大した量じゃありません。
2日くらいで元に戻る微々たる量です。(経血のほうがよっぽど多い)
しかし以前、『採血中に気分不良が起こって倒れた』ということで訴訟がおきました。
研究により、この気分不良は『迷走神経』というのが絡んでいることがわかりました。
迷走神経は生存のためにもっとも大事な神経ですが、心臓や血管などの大事な部分に沢山携わっている分、この反射が過剰になりすぎて誤作動を起こすと困ったことになります。
この過剰反応は神経原性ショックと呼ばれていて、医学的にきちんと立証されている症状です。
要するに、強い疼痛、ストレスが、迷走神経を誤作動させてしまうのです。
サスペンスドラマのベタネタで、ご主人の訃報などショックなことを聞いた奥様が白目を剥いて倒れてしまうシーンが良くありますが、これはまさに迷走神経の過剰反射です。
採血の場合において具体的に言うと、
気分が悪くなる人は、採血自体に恐怖感を強く感じている人、以前ひどく痛く感じて敏感になっている人、なにか血に対してトラウマがある人です。(交通事故を目撃して以来、という人がいた)
(迷走神経反射は、神経に直接針が刺さって起こるのではありません。したがって神経損傷の一種ではありません。)
訴訟が起きて以来、医療機関では上の問診を必ずするようになりました。
採血で気分が悪くなる人はベッドで休んで採血します。
これまでの経験上、そうすればほとんど何も問題は起きません。
ところで内科がベースキャンプの自分は、経験数の分だけ採血技術に自信があります。
明治生まれの激細血管のおばあちゃんでも、固太りで血管が全然見えない人でも、怖い態度で「失敗すんなよ」とすごまれても、臆することはあんましありません。
これは経験で学んだことなのですが、不思議なことに臆すると失敗する確立が高くなるのです。
王さんがくれた良い言葉があります。
「バッターボックスに入ったときだけは、自分を世界一だと思え」
という言葉です。
自分は毎日毎度、失敗&交代はできないという『背水の陣』の覚悟で、王さんの言葉でビビる気持ちをもみ消して、バッターボックスに入るのです。
ツーアウト、フルカウントの状態、狙うのは一発でhit、これだけです。
ちなみに看護師はどこで採血の技術を磨くかというと、実際の臨床の場で、です。
実は学生さんのうちは無免許なので、法律上、人の体に針を刺してはいけないんですね。
私も初めて患者さんのところに出向いた日の、あの恐ろしさはいまだに忘れられません。。。。。。
私は新人のころ、採血がたいへん下手でした。申し訳ない数多の失敗を、沢山の患者さんに許してもらったおかげで、ある程度でできるようになったのです。
その人に必要なこととはいえ、痛いことを人にするのです。
嫌がられて、文句を言われて当然です。
『採血』のときの言動って気をつけなきゃと思います。うまくできたからといって嬉しそうな顔をしてはいけないし、痛みを与えてるんだという緊張感をもっとかないといけないと思います。
失敗しないことを前提に、それ以上に怖くない、痛くない採血ができるように、日々精進しないといけないですね。
「痛くなかった」
と患者さんに言われるのが、一番ほっとします。