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グル松小説に関して、ある方からご感想いただきましたが、そのお返事をしながら自分の頭の整理にもなったので、続きに覚書として一部修正して載せておきます。
チョット真面目~な文章です。



サンディエゴの、ジャムサンド・シーンが良かったというご感想を頂いている。


食欲、睡眠欲、性欲が失われると、人間やばいんじゃないかと思います。
どれもどことなく尊ばれない欲望だけど、生きるのに欠かせない大切な欲望と思います。その基本の欲望と、それを満たしたときの満足感がなくなったら、マつケンの奥様のように病に倒れてしまうんじゃないかと思うのです。(そう、ディプレッションのじさつ行為は、じさつでなくて病死なのです)
 
 
松は大事なもの、いや、右足を除く肉体以外のすべてのものを一夜にして失いました。欲望を失ったまま漂流した、暗黒の期間が絶対あったと思うのです。
その部分をてんてーは見事にすっ飛ばしてくれたわけで、それは自分にとってものすごい欠損となりました。
 
「角松洋介」という自分を喪失し、そこから彼はどうやって蘇生したのだろう?
 
自分はその補完がどうしても、どうしても必要でした。自分が納得できる、実感の持てるストーリーが、自分自身のために必要でした。
「サンディエゴ」と「その歌」は、自分自身を納得させるために作った本なのです。


描写に当たって一番大事にしたのは、美味しくご飯を食べる、安眠する、性的な幸福感を得る、という角松の『生きる実感』を表現する事でした。そこから角松の人生は発露すると思いました。アレだけの損傷、喪失から立ち直り、世界を左右するような存在になるためには、その基本的な幸福が必要不可欠と思いました。
 
そして、『障害』の克服というか、障害というカテゴリーから角松を解放するという描写が必要でした。自分の職業柄か、「障害者だから○○はできない」という考え方が私は苦手で、それをぶち壊したかったのです。
てんてーは某所で、「角松は戦後、もう自由に動かない体になったから・・・」と書いてましたが、絶対それは違うと思いました。
草加から命の代わりに願いを託されて、部下を犠牲にした角松が、『障害』というカテゴリーに縛られるはずがないと思いました。脚はなくとも不自由をカバーし、自立した生活が出来る強靭な角松がそこにいたはずで、その描写が自分には必要でした。
 
 
 
思い出じゃ人間生きていけないし、未来をつかむことはできないと思うのです。
地に足の着いた、実感を伴う堅実な生活が必要なのです。
そして、思い出を共有し、現在を共感し合い、一緒に生きてくれる人が欠かせないのです。
そしてそれが出来るのはもう、グールドしかいなかった。
だけど悲劇的なことに、それはかつて銃口の向こう側にいた人間同士だった。
 
 
二冊の本で、自分の補完は出来たと思うのですが……原作に忠実に作ったおかげで(「君歌」の巻末に参考となった航跡を並べていますが、文字通り、執筆中はジパ原作に埋もれながらの生活でした。まるで辞書を引くように原作めくってました)全然幸せな方向に話がまとまりませんでした・・・自業自得・・・(涙)
 
 
あと、「君歌」のラストの髪の件。
50代の角松を見たとき、私はものすごいショックを受けたのです。
あのギザギサ前髪がない!誰コノ人!?
あの前髪、グルちゃんの回想シーンではワシントン滞在当初はあったじゃん!なんで切ったの?!何事?!なんでこんな事になっちゃったの?!

フツウの読者だったら気にも留めない部分でしょうが、そこは私、スルーできませんでした!
 
ある方が「前髪はキャラクターのアイデンティティー」と言っていましたが、まさにそういうことだと思いました。
 なぜアイデンティティーともいえる前髪を切ったのか……それはそれだけすごい事があって切ったのだよ角松は!
 
 
皆さん、幸福描写から一転、ラストでいきなり崖から突き落としてすみませんでした。


私自身が、自分で自分を真っ先に崖から突き落としましたので許してくださいwww

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